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父の遺産の相続放棄(熊本日日新聞 2021年5月12日付)

2021.05.12
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q 父が亡くなり、兄と相続の話をしています。ただ、父の遺産は県外の田畑しかなく、借金もあったようで、私は相続したくありません。兄が借金も含めて全ての遺産を相続するとの協議書を作る予定ですが、それでよいでしょうか。

 A 亡くなられた方の借金を引き継ぎたくないので遺産の全てを放棄したいという場合には、「相続放棄」の手続きを行わなければなりません。
 相続放棄をするにあたって気を付けなければならないのが、まず、家庭裁判所に申し立てをしなければならないという点です。相続人の間で遺産を引き継がないという内容の合意書を作ったとしても、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行わなければ、原則として借金の貸主からの請求に対しては、法定相続分の割合で返済をしなければならなくなります。
 また、相続放棄の申し立てにあたっては、「相続人が相続の開始を知った時から3カ月以内」との期限があることにも注意が必要です。相続放棄をすべきかどうかの判断に3カ月以上かかる場合には、別途、家庭裁判所に対して、期間伸長の申し立てを行います。
 さらに、相続人が亡くなられた方の財産を自ら処分をした場合等には相続を承認したと扱われ、3カ月の期間内でも相続放棄が認められないこともありますので、遺産の管理等についても気を付ける必要があります。
 借金を残して亡くなられた方の相続人は、対応について早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士 野上昂太郎