県犯罪被害者等支援条例(熊本日日新聞 2021年10月27日付)
2021.10.27
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Q 県内で犯罪被害に遭った人ための条例が制定されたと聞きました。どのような内容ですか?
A 2020年12月、犯罪被害者らの権利利益の保護を図り、県民が安心して暮らすことができる社会の実現を目指し「熊本県犯罪被害者等支援条例」が制定されました。被害者は、突然被害に遭うことで心身に苦痛を負う上に、経済的にも困窮して生活上の困難にも直面します。条例では、県が被害者の相談に応じ情報を提供することや、経済的負担の軽減、保健医療サービスや福祉サービスの提供と安全の確保、住居・雇用の安定を図ることを定めています。また、県民の理解の増進や被害者支援を担う人材の養成、民間支援団体の活動促進も挙げています。
被害者は、治療のために仕事に行けなかったり、精神的ショックで外出がままならなくなったりして収入が途絶えることもあります。3月、県は経済的負担を軽減するための施策として、故意に人を死傷させる犯罪を対象に、遺族に60万円、重傷被害者に30万円を支給する見舞金制度(支給条件あり)を創設しました。
被害者は、私生活を詮索[せんさく]する無責任なうわさ話をされたり、好奇の目にさらされたり、プライバシーを暴露されたりするなどしてさらに傷つくことがあります。このような周囲の偏見や無理解による言動、インターネットでの誹謗[ひぼう]中傷、過剰な取材で被害者が受ける精神的被害などを二次被害と言います。条例では、県民や事業者に二次被害が生じないように配慮することを求めています。
いつ誰が被害者の立場になるか分かりません。条例制定を機に、被害者を支援するための施策がより充実し、県民全体で支えていけるようになることを期待しています。
弁護士 渡辺絵美