失業中の労働損害(熊本日日新聞 2021年9月15日付)
2021.09.15
交通事故 交通事故
Q 交通事故に遭ったのですが、その時失業していました。このような場合でも労働損害を請求できますか。
A 交通事故に遭った場合、賠償の対象とされる労働損害には、治療により勤めている会社を休んでしまったという過去分と、事故により後遺障害が残ったために将来の就労に支障があるという将来分があります。
まず、過去分の労働損害については、例えばサラリーマンが交通事故に遭った場合は、会社から「休業損害証明書」を取得します。問題となるのは主婦や学生、無職の人です。これらの人は実際に給与収入を得ておらず、休業損害証明書もないため、休業損害をもらえないようにも思えます。しかし、主婦が交通事故によって家事ができなくなってしまった場合、女性の平均賃金を基準として休業損害を請求できます。
無職の人は原則休業損害を請求できませんが、就労が予定されていた場合などは支払われることがあります。また、学生でも事故でアルバイトを休まざるを得なくなったなどの事情があれば、休業損害を請求できます。
将来分の労働損害については、主婦は女性の平均賃金を基準として請求できます。失業者も働く意欲と能力があり、就労しようとしていた場合であれば、再就職によって得られるであろう利益をもとに請求できます。学生も全年齢の平均賃金を基礎として請求することができます。
高齢者でも就労しようとしていたり、家事に従事していたりした場合には、将来分の労働損害を請求できます。
弁護士 安村立哉