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遺産争い防ぐには(熊本日日新聞 2021年9月1日付)

2021.09.01
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q 間もなく70歳を迎えます。子どもたちも独立して社会人になっていますし、家族仲が悪いということもありません。特に多くの資産があるわけでもありませんが、私のような場合でも、相続の準備をしておく必要があるでしょうか。

 A 司法統計によれば、家庭裁判所に申し立てられる遺産分割事件は10年前と比べて約1・3倍と増加傾向にあります。また、遺産分割事件のうち遺産額が5千万円以下の事件が約76%を占め、1千万円以下に限っても約33%を占めています(2018年度)。
 つまり、遺産争いは一般のご家庭でも起こり得る問題だといえます。遺産争いが起こると時間や費用がかかり、親族関係も壊しかねないので、遺産相続の準備について検討した方がよいでしょう。
 ではどのような準備をすればよいのかという点ですが、まず、ご自身の資産を把握することが大事です。相続人の間で遺産の範囲が争われることは少なくありません。どんな資産がどれくらいあるのかを整理することをお勧めします。
 次に、遺言書の作成です。ご本人がどのような遺産を、どのような気持ちで、どのように分けるのかを明記することで、相続人の間で無用な争いを防ぐことができます。作成する際は、要件が厳しく効力が争われやすい自筆遺言ではなく、公証人が作成する公正証書遺言をお勧めします。
 また、できる範囲で現金化しておけば分割がしやすくなります。遺産争い対策ではありませんが、相続税対策として保険の活用や生前贈与などもあります。
 遺産の相続について争いを避ける準備を含めて検討すべきことは多いですし、近年相続に関する法改正もなされています。お一人で判断せず、信頼できる周囲の方や専門家へ相談しながら検討してはいかがでしょうか。

弁護士 矢澤利典