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福祉施設の職員、盗撮容疑で逮捕(熊本日日新聞 2021年7月21日付)

2021.07.21
労働問題 労働問題

 Q 社会福祉施設の経営者ですが、職員が休日に電車内で女性のスカートの中を盗撮した容疑で逮捕されました。職員を懲戒解雇できますか。

 A 一般的に、社会福祉施設の就業規則では「施設内で刑罰法規に違反する行為を行ったとき」、「素行不良で著しく施設内の秩序又は風紀を乱したときには懲戒解雇する」旨の規定が設けられています。休日の施設外における行為だとしても、盗撮が刑罰法規に触れることは間違いありませんが、職員を懲戒解雇できるかが問題となります。
 判例では、懲戒解雇するためには、解雇に客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当であること、という要件が必要とされています。仮に勤務時間内の施設内での盗撮であれば、明らかに就業規則に抵触し、懲戒解雇は免れないと思われます。
 しかし、休日中の盗撮であれば、私生活上の行為で業務とは無関係であり、ただちに労働契約上の労働提供義務に違反するわけではない、という考えも成り立ちます。
 社会福祉施設の利用者は判断能力が不十分であったり、社会的に弱い立場に置かれていたりすることが多く、利用者が施設内で安心して生活するための環境を整備することは施設の義務といえます。休日中の施設外での行為であっても、職員が電車内で女性のスカート内を盗撮し、逮捕されたのであれば施設の秩序維持はもとより、他の職員、施設への信頼も大きく損なわれます。
 本件での懲戒解雇が合理的で、かつ相当であるか否かは、施設の事業の種類や規模、当該職員の施設内での地位や職種、盗撮の動機と結果、示談の有無、反省の様子や日頃の勤務態度などを総合的に考慮して判断されます。ただ一般的には、懲戒解雇は可能であると思われます。

弁護士 三角恒