公正証書作成の注意点(熊本日日新聞 2021年7月7日付)
2021.07.07
相続・遺言問題 相続・遺言問題
Q 遺言をする際、公正証書を作っておけば安心・安全と聞きましたが、実際はどうなのでしょうか。盲点はないのでしょうか。どのような点に注意したら良いのか、具体例があれば教えてください。
A 公正証書とは、公証役場という役所で公証人が作成する文書のことです。公証人は、元裁判官や元検察官も多く、社会的に信用されています。
しかし、遺言する本人が重病で公証役場に出向けない場合には、公証人が自宅や病院を訪れて公正証書を作成することもあります。そのような場合、遺言者の病状がどのようなものなのか、遺言する「意思能力」があるのかを慎重にチェックする必要があります。医師の詳細な診断書がいる場合もあります。
ところが、現実には医師の診断書どころか、慎重なチェックなしに公正証書が作成されてしまった事例があります。県内でも、公証人が病院まで出向いたにもかかわらず、医師らの意見も聞かず、病室に直行。公正証書が作成されてしまった事案がありました。これでは、作成された公正証書が遺言者の真意に基づくものなのか疑問が残ります。
また、公正証書の作成状況については、時系列に沿った記録や録音などが残されるとは限りません。場合によっては親族ら証人(立会人)がメモを取るなど、気を付ける必要があるでしょう。
弁護士 松本津紀雄