支払督促が確定(熊本日日新聞 2022年1月12日付)
Q 裁判所から「支払督促」が送られてきて、放っておいたら確定してしまいました。給料の差し押さえも受けています。何とかなりませんか。
A 支払督促は、簡易裁判所の書記官が書類審査だけで、相手の言い分を聞かずに発する書面です。このように、簡単に裁判所から出してもらえるので、出す側に後ろめたさがある場合もあります。例えば、消滅時効期間が過ぎてしまった債権では、債務者から時効の援用(時効を使うという意思表示)があるまでは、債権が消滅しません。そこで支払督促という方法を使うのです。さらには、東京簡易裁判所から支払督促が送られてくることがあります。それで、受け取った債務者は裁判で争うことを諦めてしまいます。
支払督促が届いたら、2週間内に異議申し立てをすることが必要です。そして、弁護士や司法書士に相談して、相手の請求が本当に正当なものかどうかを確認することが大事です。東京から支払督促が来ても裁判は地方で行われます。
また、支払督促は確定してしまっても、既判力がないとされています。支払督促の確定に既判力がないということは、確定しても、反論ができるということです。消滅時効について言えば、請求異議の訴訟を起こし、そこで消滅時効の主張ができます。これによって支払督促の効力をなくすことができます。給料の差し押さえも解除されます。
私が扱った事件で、消滅時効にかかる直前の請求だったにもかかわらず、支払督促に異議を唱えて裁判となり、2回出頭しなかった相手が訴えを取り下げたとみなされ、結局消滅時効にもかかることになって債務を免れたことがあります。支払督促には積極的に異議を唱えることが必要です。それと共に、確定しても諦めず、自己の権利の主張をすることが大切です。