男性のDV被害(熊本日日新聞 2022年4月6日付)
2022.04.06
離婚・家庭問題 離婚・家庭問題
Q 妻から継続的に暴言を吐かれます。大声で怒鳴られたり、「離婚する」と言われたりもします。また、私は妻にDV(家庭内暴力)などしていないのに、妻は「夫からDVを受けた」と周囲の人にうそをついたりもします。精神的に参っています。助けてほしいです。
A DVというと女性が被害に遭うケースを想像しがちですが、男性のDV被害も少なくありません。
被害の申告を躊躇[ちゅうちょ]しがちなDVは、一般的に表面化しにくいといわれます。男性はより申告をためらいがちで、申告しても男性の被害は理解を得られにくいことなどから、統計に表れない男性被害者の「暗数」は相当あると考えられます。
物理的な暴力はもちろん、暴言を吐く、ヒステリーを起こして暴れる、周囲に虚言を言う、子に会わせないなどの精神的暴力であるモラルハラスメント(モラハラ)もれっきとしたDVです。とりわけ男性のDV被害では、物理的暴力よりもモラハラ被害のほうが深刻です。
加害者である女性側が、モラハラの手段として「夫からDVを受けた」などと虚言を述べる場合があるのも特徴的です。このような状況が続くと、「DVは女性が被害に遭いがち」という社会的先入観も相まって、本当は被害者である男性がぬれぎぬを着せられる危険があります。
最近は男性のDV被害が社会でも認知されつつあり、相談体制が整ってきました。早めに公的機関や弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士 清水谷洋樹