高齢者虐待(熊本日日新聞 2022年5月4日付)
2022.05.04
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Q 母は認知症で、私の兄と同居し介護を受けています。先日、母の体にあざができてているのを見つけました。「兄からたたかれた」と話しています。どうすればよいですか。
A ご質問のケースは、高齢者に対する虐待に該当する可能性があります。
虐待は、殴る蹴るなどの身体的虐待、介護や世話の放棄・放任(ネグレクト)、暴言などの心理的虐待、合意のない性的行為などの性的虐待、金銭を使い込むなどの経済的虐待に大別されます。
高齢者を虐待から保護するため、高齢者虐待防止法という法律があります。この法律においては、養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した人は、生命や身体に重大な危険が生じている場合、速やかに市町村に通報しなければなりません。それ以外でも、通報に努めなければならないとされています。
今回のケースでは、お兄さんによる身体的虐待が考えられ、すぐに通報すべきです。通報は虐待があると思われる「状況」であればよく、「確証」までは必要ありません。
通報を受けた市町村は、調査して虐待の有無を判断します。場合によっては、行政の権限で高齢者を施設に入所させるなどの措置を取ります。
虐待は家庭など閉鎖空間で起こるため、外部に発覚しにくく、虐待を受けた人が声を上げにくいという特徴があります。発見した人が行政につなぐことで、社会で高齢者を守る必要があるのです。
弁護士 田上裕輝