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転職先への顧客情報持ち出し(熊本日日新聞 2022年10月19日付)

2022.10.19
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 Q 営業職ですが、転職する前に今の勤務先の顧客情報をコピーし、再就職先での営業活動に使おうと思います。現勤務先では、秘密と表示された顧客情報を見るアクセス権限は与えられています。

 A このように勤務先の顧客情報を勝手に持ち出すことは民事・刑事の法的責任を問われることになりかねません。絶対に行わないでください。
 従業員には、勤務先の仕事上の秘密を守る雇用契約上の法的義務があります。情報が不正競争防止法で定めた営業秘密に当たる場合、退職後に使うつもりで在職中にコピーしたり、退職後に使用したりすれば、営業秘密の侵害として差し止め請求や損害賠償請求、信用回復措置などの請求を元の勤務先から受けるだけでなく、刑事処罰(懲役や罰金)を受ける場合もあります。
 勤務先としても、事業活動に有用で公に知られていない顧客情報、生産や販売のノウハウなどを営業秘密として法的に保護してもらうためには、その情報に「秘」マークを表示し、アクセス制限や保管場所の施錠を行うなどし、従業員に何が営業秘密であるか、またどこまでが秘密であるかを認識できるようにしておく必要があります。さらに、就業規則で秘密保持義務を定め、営業秘密に当たる情報の職務以外の目的での使用の禁止を定めておきましょう。
 相談者の勤務先の場合、顧客情報へのアクセスが限定されており、かつ秘密と表示されています。これを持ち出すことは営業秘密を侵害する行為として禁止されています。なお、営業秘密に該当しない場合であっても、持ち出すことで法的責任を問われることもあります。注意してください。

弁護士 奥村惠一郎