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認知症の夫の預金引き出し(熊本日日新聞 2022年11月30日付)

2022.11.30
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 Q 夫が突然、脳梗塞で寝たきりとなり、現在は脳血管性の認知症との診断を受け、意思疎通も困難です。夫の口座から入院費や生活費を引き出すため、銀行に相談したところ、後見人をつけなければダメだと断られました。どうすればよいでしょうか?

 A 全国銀行協会が昨年公表した「金融取引の代理等に関する考え方」によると、認知症などで預金者の意思確認ができない場合、成年後見制度の利用を求めることが原則とされています。しかし、本人の医療費の支払いなどについては、親族への出金に応じる余地があるとしています。
 よって、銀行にもう一度「考え方」の趣旨に即した、柔軟な対応を求めてみてください。それでも十分な払い出しが受けられない場合や、ご主人名義の不動産を処分する必要が生じた場合は、後見制度の利用を検討せざるを得ません。
 後見制度には、後見人を裁判所が選ぶ「法定後見」と、事前に本人が選ぶ「任意後見」があります。
 法定後見では、親族ではなく、弁護士などが選任されることが少なくありません。その場合、一般的に財産をできるだけ減らさないことに主眼が置かれがちで、共に財産形成をしてきたご夫婦の考えに沿った使い方が難しいことがあります。残念ながら後見人の立場を悪用し財産を横領する弁護士も、極めてまれとはいえ、後を絶ちません。
 一方、任意後見は、ご主人が健在なうちに任意後見契約を締結していなければ利用できません。また、信頼できるご家族に財産管理を任せる家族信託契約という選択肢もあります。
 万が一の場合、本人の意向に沿った財産管理を実現するには、あらかじめいずれかの契約を締結しておくことが有用です。ご家族で話し合い、必要に応じて弁護士に相談されることをお勧めします。

 

弁護士 木野博徳