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ツイッター社の週80時間労働(熊本日日新聞 2023年3月22日付)

2023.03.22
労働問題 労働問題

 Q 少し前のことになりますが、イーロン・マスク氏が買収した米ツイッター社の社員に対し「週80時間の激務に備えるか、退職するか選択せよ」と迫った、との報道がありました。米国と日本では労働法制が全く違いますが、日本ではこのようなことが許されるでしょうか?

 A 日本では原則、労働時間は18時間、140時間を超えてはならないと法律で定められています。ただし、これには例外があり、企業と労働組合などが書面で協定し(いわゆる三六協定)、労基署へ届け出た場合、労働者に上限を超える労働をさせることができます。
 その場合でも無制限ではなく、超過できる上限は基本的に月に45時間、年間360時間です。さらに特別条項があり、突発的に業務量が増える場合などは複数月平均で残業が月80時間、それも年間6カ月までとされています。
 そうすると、三六協定がない場合は週80時間も働かせることはできません。協定があり上限まで働いても、週80時間を原則にするのは難しいでしょう。そもそも、そのような協定自体できないと思われます。
 もちろん、従わないからといって企業が労働者を解雇することは許されません。解雇には正当な理由が必要で「激務をしないから」というのは正当な理由になり得ないでしょう。
 そもそも現代の企業は、より快適な職場環境を提供し、効率的な労働で成果を出すことが求められます。長時間労働はその正反対の方向性と言えるでしょう。ツイッター社では最近、一部サービスで障害が発生しているとの報道があります。長時間労働の悪影響でしょうか。よく原因を分析していただきたいところです。

弁護士 北條将人