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相続放棄の空き家(熊本日日新聞 2023年4月6日付)

2023.04.06
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q 5年前、父が自宅と借金を残して亡くなりました。私は唯一の相続人でしたが、家庭裁判所で相続放棄しました。このたび、空き家となっている父名義の自宅の隣の人から、「建物が老朽化して倒壊の危険があるので、何とかしてほしい」と言われました。私は自宅の管理について、法的な責任を負うのでしょうか。

 A 結論から言えば、相談者が相続放棄した時点で自宅を占有していなければ、原則として法的責任を負いません。一方、相談者が自宅を占有していれば、相続人または相続財産の清算人に対して自宅を引き渡すまでの間、自分の財産と同じように保存・管理する義務が生じます。
 相続放棄後の空き家の管理責任について、改正前の民法は、相続放棄をした者は、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自分の財産と同じように管理を継続しなければならないと定めていました。ただ、相続放棄後も管理責任を負う相続財産の範囲や対象が不明確でした。
 4月施行の改正民法では、相続放棄者が財産保存の義務を負うのは、相続放棄した時点で現実に占有している相続財産であると明確になりました。改正前なら管理責任を負う可能性がありましたが、改正後は自宅を占有していなければ、管理責任は負いません。

弁護士 益田陽介