過労死の労災認定基準見直し(熊本日日新聞 2023年5月18日付)
2023.05.18
労働問題 労働問題
Q 過労死の労災認定基準が約20年ぶりに見直されたと聞きました。具体的に何が変わったのでしょうか。
A 過労死とは、長時間労働などの過労が原因で、脳や心臓に過重な負荷がかかり、それが原因で死亡に至ることをいいます。一定の要件を満たせば、労働災害(労災)と認定され、保険給付を受けることができます。
長時間労働が原因の過労死の場合、2001年の基準に基づき、①発症前1カ月間におおむね100時間を超える時間外労働があったか②発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働があったか、という2点が労災認定の目安とされてきました。なお、時間外労働の時間数は、1週間当たり40時間を超える労働時間で計算します。
ですが、この目安に満たなくても労災認定された事例があることや、働き方の多様化や職場環境の変化といった事情などを踏まえ、21年9月に約20年ぶりに基準が見直されました。
具体的には、上記の目安に満たない場合でも、拘束時間・連続勤務・勤務間インターバルの長さ、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務・出張勤務・心理的負荷を伴う業務・身体的負荷を伴う業務の有無・程度、作業環境などの事情を考慮して、労災と認定される場合があることが明確になりました。これにより、労災と認定される過労死の範囲が広がることが期待されます。
弁護士 向井飛翔