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性被害裁判、個人情報伏せたい(熊本日日新聞 2023年7月5日付)

2023.07.05
刑事事件 刑事事件

 Q 知らない人からいきなり襲われる性被害に遭い、けがもさせられました。加害者に治療費や慰謝料を請求したいのですが、民事裁判を起こせば、加害者に私の名前や住所が知られてしまうのでしょうか。

 A 今年2月に施行された改正民事訴訟法により、一定の事情があれば、氏名や住所を相手に伝えずに民事裁判を起こせるようになりました。
 これまで民事裁判の訴状には、原告の氏名、住所を記載しなければならず、訴状は相手に送られるため、原告の氏名、住所が相手に伝わっていました。このため知らない相手から被害を受けた場合、被害者が氏名や住所を加害者に知られたくないという理由で、民事裁判を躊躇[ちゅうちょ]することがありました。
 そこで民事裁判を起こす際に原告の氏名、住所を秘匿できる制度ができました。使えるのは、氏名や住所を知られてしまうと社会生活に著しい支障が出るおそれがある場合です。
 方法としては、裁判所に秘匿決定の申し立てをします。裁判所には真の氏名、住所を届けますが、秘匿が決まると、訴状などには真の氏名、住所を記載せずに済みます。このため相手に氏名や住所を知られることなく、民事裁判を進めることができます。
 DVや児童虐待、ストーカー行為、反社会的勢力が問題となる訴訟などでも、この制度の利用が考えられます。

弁護士 渡辺絵美