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事実婚の相続権(熊本日日新聞 2023年12月20日付)

2023.12.20
離婚・家庭問題 離婚・家庭問題

 Q 私は、婚姻届を出していない事実上の夫と2人で、夫名義の住宅で生活しています。将来、夫に万一のことがあった時には、私は自宅に住み続けたり、夫の預貯金を相続したりすることができますか。

 A 相続は、戸籍上の親族関係に基づいて発生します。そのため、婚姻届を出していない事実上の配偶者には、相続権はありません。ご相談の事例でも、夫の死亡時、夫名義の住宅や預貯金などの資産は、戸籍上の関係に基づいて、夫の子やきょうだいなどが相続することになります。
 もっとも、相続人がいない場合には、特別縁故者への分与制度を利用できる場合があります。これは相続人のいない遺産を、家庭裁判所の判断で、相続人以外で生計をともにしていた家族などに分け与えるという制度です。
 これにより相談者が遺産を取得することができますが、相続人がいない場合(またはすべての相続人が相続放棄をした場合)にしか利用できません。事前に家裁に相続財産の清算人を選任してもらうなど、手続きが煩雑で費用もかかるといった短所もあります。
 相続人の有無にかかわらず遺産を取得できる方法としては、夫が生前に遺産を相談者に遺贈する旨の遺言を書いておくということが考えられます。ただし、子など一定の相続人には遺留分があり、遺言によって相続できなくなった遺産の一部を取り戻すことができるので、遺言を作成するときには注意が必要です。

弁護士 田上裕輝