障害者虐待通報時の個人情報(熊本日日新聞 2024年2月14日付)
2024.02.14
その他 その他
Q 知的障害がある成人に対する親の身体的虐待やネグレクト(放棄)が疑われる場合、調査する地方自治体に対し、本人の個人情報を提供することは許されますか。
A 市町村等は、障害者に対する虐待が疑われる家族への援助や介入の必要性を判断するため、必要な範囲で情報収集しなければなりません。障害者の福祉に業務上関係がある人は、障害者の保護の観点から調査に協力する義務があります。そこで問題となるのが、個人情報保護との関係です。
個人情報保護法は、人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合で、かつ本人の同意を得ることが困難なときは例外的に個人情報を提供することができると定めています。
日常的な身体的虐待によって本人に重大な支障が生じているとか、長期間食事を与えずに放置しているなどの事情があれば、医療機関から病歴や、治療歴、主治医からの意見等を聴取する必要もあります。また、民生委員や近隣からも聞き取ります。
親子関係や本人の判断能力などからして、本人の同意を得ることが困難な場合も少なくありません。情報提供に当たっては、個人情報やプライバシー保護に十分配慮しつつも、事案の性質を考慮して必要性を判断してください。
弁護士 三角恒