撤回した遺言の復活は?/効力回復せず、改めて作成を(熊本日日新聞 2025年3月26日付)
2025.03.26
相続・遺言問題 相続・遺言問題
Q 当初作成していた遺言を撤回しましたが、やはり考え直して遺言を復活させたくなりました。撤回したことをさらに撤回したいのですが、できますか。
A 一度作成した遺言(遺言A)を撤回することは認められています。方法としては複数ありますが、典型的な方法は遺言の方式に従って遺言Aを撤回する(遺言B)ことです。
しかし、その後、やはり撤回はやめて当初の遺言(遺言A)を復活させたいと思うようになった場合、撤回遺言(遺言B)を遺言の方式に従い、さらに撤回すれば(遺言C)、最初の遺言(遺言A)は復活するのでしょうか。
この点、民法は遺言Bが遺言Cにより効力を失っても、遺言Aの効力は回復しないと定めています。
そのため、遺言Aと同一の内容で再び遺言の効力を持たせたい場合には、遺言Bに対する撤回遺言(遺言C)を作成するのではなく、改めて遺言書を作成するようにしてください。
なお、撤回遺言(遺言C)の中で当初の遺言(遺言A)に対する撤回遺言(遺言B)を撤回するだけでなく、「遺言Aを有効とする」と当初の遺言の復活にまで言及している事例で、裁判所が遺言者の意思が当初の遺言の復活まで希望していたことは明らかであると判断し、遺言Aの復活を認めた例もあります。
いずれにしても、複数回にわたって遺言書を作成する場合、その内容が明確かつ矛盾しない内容となるように注意してください。
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弁護士 奥村惠一郎