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「事実婚」での不都合は?(熊本日日新聞 2014年11月19日付)

2014.11.19
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Q 夫の実家に配慮して、籍を入れずに「事実婚」の状態を何年も続けてきました。夫との間に子どもはいません。最近、夫が亡くなった後のことが気になるようになりました。今さら籍を入れるのもおっくうですが、今のままで不都合があるでしょうか。

A まず、あなたが入籍の届け出をしない理由を振り返ってみてください。ご自分と夫の生き方の信条として籍を入れないのでしたら、それは尊重します。しかし、単に煩わしいとか、何となく夫の実家に気兼ねしているというのでしたら、届け出を考えてみてはいかがでしょうか。
 今の日本の法律は、届け出がないと夫婦であると認めない「法律婚主義」です。一方、届け出をしない「事実婚」を保護するためのさまざまな制度もあります。事実婚の遺族でも、配偶者として権利を主張できる場面も多いのです。
 しかし、すべての場面で事実婚が保護されるわけではありません。例えば、あなたは夫の相続人にはならず、前妻の子または夫の両親・兄弟などが相続人ですから、あなたは財産上不利になります。
 また、事実婚の保護を受けるためには、その前提として、事実婚であることを証明する手間と時間をかける必要があります。届け出をしてあれば、戸籍謄本を1通出すだけで配偶者であることは証明できるのです。
 「法律婚」には両面があり、個人を縛るものであると同時に、個人の権利を守るものでもあります。よく考えてみてください。
                           弁護士 村上雅人