証券会社が損失穴埋め約束(熊本日日新聞 2015年03月11日付)
2015.03.11
その他 その他
Q 証券会社との間で、運用益から手数料を控除した金額が一定額に満たない場合、その差額を損失として穴埋めをするとの約束をしましたが、証券会社は応じません。どうしたら良いでしょうか。
A 損失を保証する契約は、民法90条「公の秩序又は善良の風俗」に違反するものとして無効となります。このような損失保証契約は、金融商品取引法で禁止され、違反すると同法に基づき刑事罰が科せられます。
このような損失保証契約は、1989年に旧大蔵省から損失補償の自粛等の通知がなされた後は、公序良俗違反として無効というべきです。91年に当時の証券取引法(現在は金融商品取引法に改称)が改正された後も、公序良俗に反し無効とするのが判例であり、学説の通説です。したがって、あなたは、証券会社に損失の保証を求めることはできません。
しかし、証券会社が損失補償を約束して投資を勧誘したのなら、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が認められるか否かが問題になります。判例も、不法行為に基づく損害賠償請求による救済を否定していません。
法律学者の中には、保証契約に基づく請求ができないのに、不法行為に基づく損害賠償として認めるのは矛盾しているとして、反対する意見もあります。しかし、最高裁は不法行為に基づく損害賠償請求を否定していませんので、不法行為が成立するか否かを検討する余地があると考えられます。
弁護士 吉井秀広