社会保険料を給与から控除 (熊本日日新聞 2015年08月12日付)
2015.08.12
労働問題 労働問題
Q 私は、株式会社でパート従業員として勤務していますが、労働時間や労働日数は正社員と全く変わりません。先日、会社から、会社が負担するはずの社会保険料を基本給から控除すると一方的に言われ、給料が減らされました。法律上の問題はありませんか。
A 社会保険とは、健康保険と、年金保険である厚生年金保険をいいます。この事例のように勤めている会社が法人の場合、その会社は必ず社会保険に加入しなければなりません。また、パートやアルバイト従業員であっても、所定労働時間や労働日数が正社員のおおむね4分の3以上であれば、社会保険の被保険者に当たりますので、会社は相談者のために社会保険料の半額を負担しなければなりません(健康保険法161条1項、厚生年金保険法82条1項)。
つまり、法律上、会社が社会保険料の半額を負担しなければならないと定められていますので、この事例のように、本来、会社が負担すべき社会保険料を、労働者に負担させることは違法なのです。
それにもかかわらず、この会社は、相談者の基本給を一方的に減額しました。基本給の減額は労働条件の不利益変更に当たりますが、この会社のように社会保険料の会社負担分を免れようという違法な目的を達成するために基本給の減額を一方的に通告することは、無効と言わざるを得ません。ですから会社は、減額した社会保険料相当額について未払い賃金として支払わなければなりません。
? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?弁護士 岩下芳乃