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遺言した人より先に死亡 (熊本日日新聞 2015年11月18日付)

2015.11.18
相続・遺言問題 相続・遺言問題

Q 夫には、子もおらず独身で高齢の叔母がいます。身寄りが夫しかいないため、夫と私が面倒を見ていましたので、叔母が夫に全財産を遺贈する旨の遺言公正証書を作成しました。ところが、叔母が亡くなる前に、先日、夫が亡くなってしまいました。私は、叔母の遺言で夫への遺贈分を相続できるのでしょうか。

 A 遺言者が死亡する前に、受遺者が死亡した場合、遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。したがって、受遺者の地位を受遺者の相続人が相続することはできません。つまり、「遺贈」の場合、相続人が被相続人より前に死亡した場合に相続人の子が相続人となるという「代襲相続」にあたる制度がありません。

 遺贈が効力を失うと、遺贈されるはずだった財産は、遺贈者の相続人のものとなります。
 叔母さまに質問者の夫以外の相続人がいれば、その相続人の遺産分割協議によって相続されることになります。
 叔母さまがこのような結論を望まず、叔母さまに質問者へ財産を遺贈するお気持ちがあるのであれば、遺言書の書き直しが必要ですので、叔母さまと相談されるのがよいでしょう。
 ただし、遺言書の中にあらかじめ、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には受遺者の相続人に遺贈するとの定めがあれば、この定めにより、相談者が遺贈を受けることは可能です。遺言の内容を確認するためにも、叔母さまと相談されるとよいでしょう。
                           弁護士 荻迫光洋