生活保護受給中の保険金 (熊本日日新聞 2015年12月16日付)
2015.12.16
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Q 私は生活保護受給者です。交通事故に遭い、保険金が40万円ほど入ることになりました。しかし保険金は全額、生活保護で支給された扶助費の返還に充てなければならないと聞きました。返還しなければなりませんか。
A 生活保護法は、保護受給者に交通事故の賠償金や年金の遡及[そきゅう]受給金が入る場合、既に支給を受けた保護費を返還すると定めています。現在の運用では全額返還が原則とされていますが、条文には全額とは明示されていません。
交通事故については、賠償金の中に、事故に伴う治療で通院するための交通費など既に本人が実費で支払ったものがあれば、それは含まれるべきではないでしょう。
また生活保護の目的の「必要限度の生活の保障」「経済的・社会的・日常生活的自立」のために使った、または使う予定がある場合、返還額から控除できます。家電製品の購入や子の就学費用不足分、家屋の補修、バリアフリー工事費などが該当します。ただし、あらかじめ福祉事務所へ申告しておかないと不認定の取り扱いをされる場合があります。
これまで返還の是非を争った裁判で、事前に申告しなかったエアコン購入費の控除が認められたケースもあります。
扶助費の返還請求に対し不服がある場合は、行政不服審査請求や訴訟によって返還決定の是非を仰ぐことができます。弁護士・司法書士に相談する場合は、生活保護受給者が利用できる法テラスの費用立て替え制度もあります。
弁護士 加藤修