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兄に実印を渡してよい?(熊本日日新聞 2016年3月23日付)

2016.03.23
相続・遺言問題 相続・遺言問題

 Q 両親が相次いで亡くなりました。兄が、実家の土地・建物を自分の名義に変えたいから実印を貸してほしいと言ってきました。家を兄の名義にするのは構わないのですが、預貯金などは分けてほしいと思っています。実印と印鑑証明書を渡してよいでしょうか?

 A どんな書類に押印されるか分からないのに、実印や印鑑証明書を渡してはいけません。実印を押されたら、その書類に書かれている通りのことをあなたが約束し、合意した証拠になります。後で「そんなつもりはなかった」と言っても、言い分を認めてもらうことは難しくなります。
 もしかするとその書類には、「私の相続分は全て兄に譲ります」と書いてあるかもしれません。そうなると、あなたは、実家の土地や建物だけでなく、預貯金など全ての遺産についての相続権を、お兄さんに譲ったことになります。「おまえが相続するはずだったものは全て俺がもらったから、おまえに渡すものはない」と言われたら、反論できません。
 土地・建物の名義変更を、早く済まさなければならない事情は特にないと思われます。預貯金なども含めたご両親の遺産をどう分けるか、きょうだいできちんと話して合意することができれば、その時点で、土地・建物の名義変更についての書類に実印を押せばよいと思います。「預金のうち私が相続する分を渡してくれたら、引き換えに書類に実印を押して印鑑証明書も渡す」と伝えてもよいでしょう。
                           弁護士 高木紀子