母の遺産が分からない(熊本日日新聞 2016年4月6日付)
2016.04.06
相続・遺言問題 相続・遺言問題
Q 先日、母が亡くなりました。相続人は私と兄の2人です。父の遺産は全て母が相続したので、母には多少なりとも遺産があるはずです。しかし、母の財産は何年も前から兄が管理しており、どの金融機関にどれほど預貯金があるのか全く分かりません。
A 相続人は、被相続人名義の口座がある金融機関に、単独で取引履歴の開示を請求できます。口座の所在が分かっていれば、ご自身でも比較的簡単に預貯金の状況を知ることができます。
他方、どこの金融機関に口座があるのか分からない場合、被相続人の生活状況などから、口座がありそうな金融機関に対して照会していくことになります。この場合、ある程度の手間がかかりますし、探し方に多少コツも必要です。
また、被相続人の財産を特定の相続人が管理していた場合、生前に多額の贈与を受けていたり、その相続人に有利な遺言(例えば「一切の財産を長男に相続させる」など)が作成されていることがあります。このような場合には、特別受益や遺留分といった法的な知識を要する上、被相続人の財産状況について、できるだけ正確に把握する必要があります。
なお、取引履歴の保存期間は通常10年です。例えば、父の相続の際にうやむやにされていた問題を母の相続の際に持ち出そうとしても、既に父名義の口座の取引履歴が消滅していることがあります。気になる点があれば、早めに相談されることをお勧めします。
弁護士 田中智之